Results - Japan ACM SIGCHI Chapter Award 2020

2020年度 (第1回)Japan ACM SIGCHI Chapter Award受賞者

2021年1月24日

Japan ACM SIGCHI Chapter では,人と情報技術の関わりに関する学問・技術分野の発展を図る目的で,2020年度に次の賞を創設しました.

  • 功績賞(Lifetime Community Contribution Award)
    当該分野の発展に資する多大な貢献を行った個人
  • 優秀若手研究者賞(Distinguished Young Researcher Award)
    当該分野の将来を担う若手研究者

この度,ご推薦をいただいた候補者から,厳正な審査に基づき,2020年度(第1回)の受賞者として次の方々を受賞者と決定いたしました.授賞式は,Japan ACM SIGCHI Chapter主催のInternational Symposium on Human-Computer Interaction 2021 (2021年1月24日開催)で執り行われました.

功績賞

氏名: 中小路 久美代 氏 (公立はこだて未来大学 教授)

授賞理由:
中小路氏は,人と情報技術の相互作用に関する学術分野(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)の研究者として,特に,知的創造作業のためのナレッジインタラクションデザインの領域において数多くの業績をあげ,国内外で高い評価を受けて来られました.まだ日本からのHCIに関する発表が少なかった1990年代初頭から国際会議において論文発表を盛んに行い,この分野で最も権威がある重要国際会議CHIにおいて,Tutorial, Workshop, Mentoring などのChairやPapers Associate Chairを何度も務められるなど,日本のヒューマン・コンピュータ・インタラクション研究の黎明期から国際的に活躍して来られました.その後の日本人研究者が国際的にも活躍するようになる状況を先導した,まさに第一人者と言えます.

国内でも,ヒューマンインタフェース学会や情報処理学会,人工知能学会などの理事,文部科学省科学技術・学術審議会委員をはじめとする複数の日本政府機関の委員,ACT-IやさきがけなどJSTのプログラムのアドバイザーを歴任されるなど,分野の発展に大きく貢献されました.さらに,これらの活動を通して若手や女性を中心に多くの研究者に多大な影響を与え続けられ,何よりも,氏の影響を受けた者が皆その後それぞれの持ち場で活躍し,分野のさらなる発展に貢献していることは,氏の人柄と影響力の大きさを再認識する事実であると思います.

以上のように,人と情報技術の関わりに関する学術分野の発展に資する中小路氏の貢献は多大であり,功績賞にふさわしいと認められました.

優秀若手研究者賞

氏名: 坂本 大介 (北海道大学 准教授)

授賞理由:
坂本氏は,ヒューマン・コンピュータ・インタラクションやヒューマン・ロボット・インタラクションの分野で数多くの優れた研究成果を発表し,トップコンファレンスで何度も受賞されるなど,国際的にも高く評価されてきました.加えて,国際会議や論文誌,学会組織等の運営にも幅広く貢献してこられました.例えば,HCIの分野で最も権威がある重要国際会議CHIでは,2015年,2019年〜2021年にPaper Associate Chairを務めらました.さらに複数の国際学術論文誌でAssociate Editorを務めておられます.日本国内では,国際会議CHI採択論文を対象にした国内若手研究者のための勉強会を毎年継続的に運営してそれを全国規模に拡大させ,日本からの採択論文数増加に寄与するとともに,国外研究者からも一目置かれるイベントに発展させた貢献や,CHI開催地で毎年開催しているJapan Nightの立ち上げと運営に対する貢献が認められます.これらの活動は,HCI分野の日本のプレゼンスの向上に大きく寄与し,同会議を2021年に初めて日本で開催する事にも結びつきました.他にも,Japan ACM SIGCHI Chapter の立ち上げとTreasurerとしての運営をはじめ,情報処理学会のシンポジウム「インタラクション」やソフトウェア科学会のシンポジウムWISSなど,大規模重要国内イベントでの長年に渡る運営とサポートなど,若手研究者を牽引するリーダーとして国内のHCI研究者コミュニティの強化と発展に注がれた氏の努力と貢献には目を見張るものがあります.

以上のように,坂本氏のこれまでの研究業績と本分野の発展のための貢献は顕著であり,優秀若手研究者賞にふさわしいと認められました.今後は,これまでのご経験を活かして,ご自身の新しいビジョンの下さらに優れた研究を進め,新しい研究分野を確立することを通して,さらに幅広く活躍し貢献されることと期待しています.

優秀若手研究者賞

氏名: 矢谷 浩司 氏 (東京大学 准教授)

授賞理由:
矢谷氏は,ヒューマン・コンピュータ・インタラクション分野の中でも,特に,ユビキタスコンピューティングおよびモバイル・インタラクションの分野で独自の研究分野を切り開き,若手研究者の中でも突出した業績を残して来られました.これらの分野のトップコンファレンス等で優れた論文を数多く発表され,それらは多くの受賞につながるなど国際的にも高く評価されています.加えて,国際会議や論文誌などの運営にも幅広く貢献して来られました.例えば,ユビキタスコンピューティング分野のトップカンファレンスである UbiComp 2015ではProgram Chairとして会議を大成功に導いた後,同会議のSteering Committee Chairを務めておられます.HCI分野のその他の重要国際会議でも長年にわたって様々な委員を務められてきており,CHIでは2019年と2020年にProgram Subcommittee Chairを務め,2022年にはPapers Co-Chairを務められる予定です.論文誌における貢献も大きく,Proceedings of ACM Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technology(PACM IMWUT)では2016年創設時からのEditorを務め,ACM Transactions on Computer-Human Interaction (TOCHI)の編集委員,Foundations and Trends in Human-Computer InteractionではEditorを務めるなど,国際的に高い存在感を示しています.さらにはJapan ACM SIGCHI ChapterのVice chair等も務められるなど,これまでの研究業績と分野の発展のための貢献,さらにこれからの分野を先導してゆく発展性はいずれも顕著であり,優秀若手研究者賞にふさわしいと認められました.

今後は,これまでのご経験を活かして,ご自身の新しいビジョンの下さらに優れた研究を進め,新しい研究分野を確立することを通して,さらに幅広く活躍し貢献されることと期待しています.